坂井豊貴『ミクロ経済学入門の入門』:看板に偽りなし

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

 

 

ミクロ経済学の入門書、の前に読むべき入門書。

経済学に限らずどの分野においても、思ったより簡単に最初から最後まで読めてしまう(ところどころ理解に怪しい部分があったとしても、挫折しないである分野の本を一冊読み切れる)というな配慮は入門書にとって重要だと思う。著者の体験や読者にとって身近な事例などを織り交ぜた柔らかい語り口と、図を多用したビジュアル、書籍の薄さ(176ページ)などのおかげで本当にサラッと読めてしまう本書は、そのような配慮に溢れた書籍だ。

この薄く、読みやすい本のなかにミクロ経済学が取り扱う多岐多様にわたるトピックがこれでもかというくらいぎっしり詰め込まれていることも驚きだが、一方で書籍全体として一つのストーリーになっているので、扱われているトピック同士の関係性や、それぞれのトピックがミクロ経済学の中でどのような意味を持って取り扱われているのか、というのを理解しながら読み進めることができ、詰め込まれたトピックの多さによって読者が混乱することもない。

本書により深淵なるミクロ経済学の世界を入り口からちらっと覗き見てしまった読者は、著者の思惑通り「もっと中を覗いてみたい」と思わせられるだろう(かく言う自分が、まさにそうだ)。「入門の入門」の看板に偽りなし。

併せて、同じ著者による、評判の良い他の書籍も読んでみたい(まずは新書から)。

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